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  梅の香を探し探して

 花粉の問題さえなければ、散歩にいい季節になった。うれしくて、あちこちに出かける。
 東京の仲間と句会をやっている。みな素人ばかりの集まりで先生と言うものがいないから、いっこうに上達しない。ただわいわいと勝手に選び合い、その後の飲み会が楽しみというだけのことだ。
 鎌倉の町は俳句に力を入れている。「坊ちゃん」の道後のように、俳句ポストを作って、と言う話を、友人の松中さんから聞いた。松中さんは来る選挙のことで、青い顔をしている。手伝いたいけれど、ほとんど何もできない。その鎌倉に住んでいるのだから俳句の題材はいくらもあるけれど、東京の俳句仲間は鎌倉について無知である。
 たとえば、こないだの句会で「梅の香を 探し探して 谷戸の道」というのを作ったけれど、彼らには「谷戸」というのがわからない。説明するのも億劫で、だから簡単に落選した。もっともこの句は、よくない。「鶯を たずねたずねて 青野まで」という六本木の和菓子店「青野」の宣伝俳句があるのだ。青野の名物の鶯餅のことをよんだものだろう。それの物真似と思われたのかもしれない。
 俳句のためもあって、よく歩く。ぼくの鎌倉散歩は、あてもない。ただ、気まぐれにウロウロする。けど、突然面白いものに出会う。今小路から小町通りへと小さな踏切を渡る角の洋風雑貨屋の壁に、とてもいい木彫がほどこされた板戸がある。電車の通過を待つ間、それを眺めるのが娯しみだ。
 喜多川邸の手前を、やはり小町通に向かう小道の角にある掲示板には、木の葉を押しピンで留めてあるのを見つけた。近くに生えているヒイラギの葉で、とても可愛らしい。
いたずらだろうか、それとも飾りのためだろうか。見ていて楽しくなることは確かで、この時もしばらくたたずんで眺めていた。
 散歩はいろんなものを発見させてくれる。人の目を楽しませる工夫が、いかにも鎌倉らしいのである。


2005 May/Higashi#2



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